Netflixオリジナルドラマ「アドレセンス」は、最後まで明確な答えを提示しない作品でした。誰が悪かったのか。どこで間違えたのか。ジェイミーは本当に“怪物”だったのか。
全4話を通して描かれていたのは、特別な異常者ではなく、“どこにでもいる普通の少年”の危うさでした。
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🎬 アドレセンス(2025)
- 話数:全4話
- ジャンル:クライム
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「アドレセンス」は、“普通の少年”の危うさを描いていた

ジェイミーは、“特別な怪物”ではなかった
Netflixドラマ「アドレセンス」を観ていて印象的だったのは、ジェイミーが最初から“異常な存在”として描かれていなかったこと。
彼はいじめの被害者でもあり、周囲からの視線に傷つき、愛情や承認を求めている普通の思春期の少年にも見えます。感情の起伏が激しく、周囲との距離感も不器用で、どこか幼い。
そのため、視聴者はジェイミーを完全に“怪物”として切り離すことができません。
「アドレセンス」の恐ろしさは、ジェイミーが特別な異常者ではなく、“どこにでもいる普通の少年”の延長線上にいるように感じられたからでした。
誰の中にもある感情が描かれていた
「アドレセンス」の中で描かれていた怒りや屈辱感は、決して特別なものではありません。
認められたい。
見下されたくない。
馬鹿にされた相手を見返したい。
そういった感情は、多くの人が一度は経験したことがあるものだと思います。
もちろん、大半の人はそこで踏みとどまります。怒りを感じても、感情をそのまま行動に変えたりはしません。
「アドレセンス」は、その感情の扱い方を間違えた時、人はどこまで壊れてしまうのかが描かれていました。
だからこの作品は、“特別な誰か”の物語ではなく、観ている側の感情にも静かに触れてきます。
普通だったからこそ、現実味があった
ジェイミーには、どこか矛盾した部分があります。
弱々しく見えたかと思えば、突然怒りを爆発させる。誰かに愛されたいようにも見える一方で、相手を支配しようとするような一面ものぞかせる。
第3話の面談シーンでは、その危うさが特に強く描かれていました。ただ、あの姿も“完全な別人格”というより、未成熟な感情が整理されないまま混在していたように感じます。
怒り、孤独、承認欲求、恐怖。
思春期特有の不安定さが、ジェイミーの中ではうまく統合されていませんでした。
自分が何を感じているのか。なぜそこまで怒ってしまうのか。ジェイミー自身も、その感情を整理しきれていなかったようでした。
そして、その未成熟さが妙に現実味を帯びていたからこそ、「アドレセンス」は単なる犯罪ドラマではなく、人間の危うさそのものを描いた作品として強く印象に残りました。
「アドレセンス」で見えた、ジェイミーの“支配欲”
「指図するな」という怒り
Netflixドラマ「アドレセンス」第3話のジェイミーと分析医との面談シーンには、ジェイミーという少年の危うさが描かれています。
これまでのジェイミーは、どこか弱々しく、被害者のようにも見えていました。ところが、面談が始まると彼の態度は一変します。
座るよう促された瞬間、「僕に指図するな」と怒鳴り、感情を爆発させる。その姿には、単なる反抗的な思春期の少年とは違う危うさがありました。
中でも、ジェイミーが“指示されること”そのものに強く反応していたのが気になりました。
分析医の女性は、彼を責め立てていたわけではありません。むしろ落ち着いた態度で会話を進めようとしていました。
それでもジェイミーは、主導権を握られることが耐えられないようでした。そこには、いじめによって傷つけられてきた自尊心や、誰かに見下されたくないという感情も関係していたのかもしれません。
特に興味深かったのは、相手が“女性”だったことです。
ジェイミーは作中で、ケイティから傷つけられてきた過去を匂わせています。その経験が、彼の中で女性に対する認識を歪めてしまったようにも見えました。
だからこそ、あの面談では、“分析されること”以上に、“女性に主導権を握られること”そのものへ強い拒絶反応を示していたのかもしれません。
怒りのあとに見せた“微笑み”

面談シーンでもうひとつ印象的だったのは、ジェイミーの感情の切り替わり方です。
怒鳴り声を上げ、椅子を投げるほど感情を爆発させていたと思ったら、その直後には急に落ち着きを取り戻し、分析医の表情をじっと観察する。
そして分析医に対し、「顔が赤いよ」「怖かった?」といった言葉を口にする。
あの瞬間のジェイミーは、怒っているというより、“相手がどう反応するか”を見ているようにも感じられました。
恐怖を与えられたのか。
動揺しているのか。
自分に支配されているのか。
まるで、それを確認しているようにも見えます。
強烈だったのは、「まだ13歳で、見た目も怖くない」とジェイミー自ら語る場面です。
普通であれば、自分を落ち着かせるために言いそうな言葉ですが、ジェイミーの場合は少し違って見えました。“それでも怖かったでしょう?”と、相手の反応を確かめているような不気味さがあったからです。
もちろん、ジェイミーは冷酷な怪物として描かれているわけではありません。
ただ、第3話では、怒りや恐怖だけでなく、“他人の感情を揺さぶることで主導権を握ろうとする危うさ”が強く描かれていたように感じます。
そして、その未成熟な支配欲が、あの面談シーン全体に張りつめた空気を生み出していました。
「僕はマシ」という危うさ
面談シーンの中で静かに恐怖を与えてくるのは、ジェイミーの「僕はマシ」という発言です。
ケイティがナイフを怖がっていたことを語りながら、ジェイミーは「他の人ならきっと触っていた。でも僕はしなかった。だから僕はマシだ」と話します。
この言葉が恐ろしかったのは、“やってはいけないこと”の基準が、自分の中ではなく“他人との比較”になっていたことです。
本来であれば、ナイフを持った状態で相手を恐怖に追い込んでいる時点で、その状況はすでに危うい。ところが、ジェイミーは、「もっと酷いことをしなかった自分」を基準にして、自分自身を正当化しているように見えました。
しかも、あの場面のジェイミーには、自分の言葉の異常さを完全には理解できていないような幼さもあります。
善悪そのものが分からないわけではない。
人が死ぬことの重大さも、頭では理解しているはず。
ただ、その感覚がまだうまく実感として結びついていない。
自分が何をしたのか。その行動がどれほど取り返しのつかないものだったのか。
ジェイミー自身も、まだ整理しきれていないように見えました。
それは罪を軽く考えているというより、自分の感情や行動を整理しきれていない未成熟さゆえのものだったのかもしれません。その危うさが妙に生々しかったため、「アドレセンス」は単純な“異常者の物語”には見えないのでしょう。
「アドレセンス」は、“誰か一人の責任”を描かなかった

父親は答えを探し続けていた
最終話の第4話では、ジェイミーの父親がずっと自分自身を責め続けていました。
どこで間違えたのか。
なぜ気づけなかったのか。
自分の育て方に問題があったのではないか。
ジェイミーが殺人を犯した原因を、自分の中に探し続けているようでした。しかし、「アドレセンス」は、その問いに明確な答えを出しません。
父親に責任がまったくなかったとは言い切れない。ただ、父親だけを原因として描いているようにも見えませんでした。
第4話では、家族の中にあった距離感や孤独も静かに描かれていましたが、それだけでジェイミーという存在を説明できるわけではない。
それゆえに、父親は最後まで“答え”に辿り着けなかったのでしょう。
ジェイミーを形どったものは、ひとつではなかった
ジェイミーの中にあった怒りや危うさは、家庭環境だけで生まれたものではないように感じます。作中では、ケイティとの関係や、学校での出来事も強く示唆されていました。
思春期特有の承認欲求。
周囲に見下されることへの恐怖。
誰かに認められたい気持ち。
そういった感情が少しずつ積み重なり、ジェイミーの中で歪んでいったようにも見えます。そして、その背景には、家庭、学校、人間関係、孤独、怒りなど、さまざまな要素が複雑に絡み合っていました。
「アドレセンス」が恐ろしいのは、原因をひとつに絞れないところなのかもしれません。
誰か一人を悪者にして終わることができない。だからこそ、観終わったあとにも重たい感情だけが残ります。
普通の少年だったからこそ怖かった
「アドレセンス」を観終わったあとに残る怖さは、ジェイミーが“特別な怪物”として描かれていなかったことにあるように思います。
怒りや孤独、承認欲求そのものは、誰の中にもある感情です。
もちろん、多くの人はその感情を抱えながらも、理性によって踏みとどまる。感情をそのまま暴力へ変えたりはしません。
しかし、「アドレセンス」は、その危うい感情をうまく扱えなかった時、人はどこまで壊れてしまうのかを静かに描いていました。
ジェイミーは、完全な怪物には見えない。むしろ、どこにでもいる普通の少年のように見える瞬間が何度もあります。
そのため、この作品は他人事として切り離せない。
「アドレセンス」は、異常な誰かの物語ではなく、人間の未成熟さや危うさそのものを描いた作品だったのかもしれません。
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「アドレセンス」©︎Netflix, Inc.
※本ページの情報は2026年5月時点のものです。最新の配信状況は各公式ページをご確認ください。

