「ブス界へようこそ」感想・レビュー。ブスを理由に自ら命を絶った女子高生が転生したのは”ブス界”でした。異世界で繰り広げられる命懸けの闘争と、心に刺さる名言が魅力の異色ファンタジー。Kindleで無料配信中の隠れた名作を詳しくご紹介します。
- 作者:河野大樹
- 出版社:ナンバーナイン
- 巻数:全88話(連載中)
- ジャンル:少年マンガ、アクション、ファンタジー
- 作者SNS:X
あらすじ

生きてきて一番言われた言葉は「ブス」。そう言われても仕方ないほどのブスだった女子高校生は、自ら命を絶ちました。
そんな彼女が目を覚ますと、そこは”ブス界”と呼ばれる場所で、誰よりも綺麗になって幸せになるための最後のチャンスが得られるとのこと。今まで何も挑戦できなかった彼女は、ブスが挑める最初で最後の命懸けの勝負に参加することを決めます。
ところが、そこは想像を絶する闘争社会で、皆が綺麗になろうと自分よりも美人を食いまくる残酷な世界でした。ブス界の者たちにはレベルがあり、最初は顔も同じで名前もないレベル1から始まり、レベル2になると顔と名前が持てるようになるなど、レベルによって容姿や特徴が異なります。
生前誰とも闘ってこなかった主人公は戦い方を知りませんでしたが、運悪く出会したレベル2との闘いで驚異的な力を発揮して勝利します。それどころかレベル3の園子を、レベル4の砂子と共闘して倒してみせたのです。

その闘いの最中で主人公はレベル2に成長し、新しい顔と加英子(かえこ)という名前を手に入れました。元より争いごとを好まない加英子は砂子の生き方に感銘を受け、砂子に弟子入りします。
しかし、この世界の残酷さがこの程度では済むわけもなく、加英子は理想と現実の狭間で自分を見失いかけて……。
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感想・レビュー|「ブス界へようこそ」のどこが面白いのか?
異世界転生、”ブス界”で繰り広げられる現実より過酷な闘い
「ブス界へようこそ」は、主人公の女子高校生が自ら命を絶ち、”ブス界”に転生するところから物語が始まります。
ブス界とは、生前ブスだった者たちが、綺麗になって生まれ変わるために命懸けの闘いをする世界のこと。
この世界には明確なルールや法律は存在せず、ただ自分が綺麗になって生まれ変わるべく、供給された美人を食べてカラダを磨き、ブスはあらゆる資源へと加工されます。そのため美人は取り合い、最弱のレベル1は格上たちから狙われます。
レベルごとの違いは、以下の通りです。
このレベルを上げるには、”金(キン)”と呼ばれるものを食べて己を強化していく必要があります。ただ、いっぱい食べたという割にはレベル1の姿のままの者がいたかと思えば、主人公の加英子のようにたったひとかけらの金でレベル2に進化するなど、個人差が大きいです。
いずれにせよ、進化のために金が必要なのは同じで、皆が綺麗になって生まれ変わることを強く望んでおり、まさに弱肉強食の世界となっています。生前のような法律の縛りもないため、ブス界は“何でもアリ”なぶっ飛んだ世界なのです。
しかし、上には上がいる、というヒエラルキーはブス界にも存在しています。レベル4の上には大国を操る一族がおり、彼女らが供給門の真下の土地を奪い合っています。これは、より多くの金を得て最高の地位を得るためであり、金を奪い合う国同士の闘いでもあります。
つまり、いくらランク付けされていようが参加者たちはこの一族の持ち物にすぎず、各国の考えによって利用されるに過ぎないのが現実です。唯一、加英子だけはそんな世界を変えたい、皆がもっと強く綺麗になってほしいと願っています。
どこまでも真っ直ぐな主人公と個性豊かなキャラクターたち

主人公の加英子は、どこまでも真っ直ぐで心優しく、打ち負かした相手に対しても敬意を払います。どんな人にもチャンスは公平であるべきだと考え、争いを好みません。
それを象徴するのは、加英子が初めてブス界で闘ったシーン。加英子は自力で倒したレベル2の万子を食べないどころか、レベル4の砂子から貰った彼女の腕を万子に渡しました。これにより、本来なら死ぬはずの万子と、その仲間達は生き長らえることができました。
こんな風に純粋で優しい者は弱肉強食のブス界では珍しく、加英子という存在はブス界を大きく変えるキーパーソンとなりそうです。しかもレベル2のうちからすでに格上をも圧倒するオウラ(オーラ)を出しており、今後の成長が楽しみで仕方ありません。
その他にも、個性豊かな登場人物が多く登場します。そもそもブス界は個性が力となる側面もあることから、レベルが上がれば上がるほど個性的な者が増えます。加英子を通して出会う、様々なキャラクターとの出会いも楽しみの1つとなるでしょう。
加英子が弟子入りしたレベル4の砂子は、最悪の逆境を味方につけて不可能を可能にした前例のない女だったり、加英子のレベル3への進級戦を受け持つ朝霧久仁家の腸の臓・時子は、時間を操る能力を持っていたり。
“闇の発明狂”灰子は、時子が使う技である拡張別身体(モーションキャプチャ)の生みの親で、役目・孤月二乗計算(コゲツニジョウケイザン)という信じるものを全て奪う技などを使います。
この他にも紹介しきれないほどたくさんの個性的な登場人物がいるので、是非お気に入りのキャラクターを探してみてください!
心に刺さる”名言”の数々ーーこの作品が教えてくれるもの
「ブス界へようこそ」は、なんと言っても心に刺さる名言の数々が特徴的です。一見すると、ただただ残酷なブス界でのアクション漫画に見えますが、生前苦労してきた者たちの言葉は心に響きます。
本当にたくさんの名セリフがあるので、厳選していくつかご紹介します。

「自分自身に期待しすぎんな 何も良いことねえぞ 自分の首を絞めるだけだ。決まりを守るのが大人か?人の失敗を馬鹿にしないのが本当の大人だ」
「人より上手く出来ない事があって良い 実はその不満こそがお前の将来を化させる」
引用元:「ブス界へようこそ」第20話より引用
弟子入りした加英子が寝坊をした際に砂子が放った言葉。こんなことを飄々と口にするあたりはさすが砂子といった感じで、砂子の良さが出ています。寝坊は良いことではないですが、ルールに縛られ過ぎたり、周囲と比べ過ぎていては生きづらくなるだけということを教えてくれます。
「能力が評価され上手くいっているように見える人も 望むようにいかず思い悩む人も分解してみれば それは皆過去に自分がした投資の結果を『今』受け取っているに過ぎない」
引用元:「ブス界へようこそ」第47話より引用
レベル3の灰子とレベル4の砂子から救ってくれた加英子に、お礼の特別授業と称して時間というものについて説いた際の時子の発言。つい表面上で見えるものに目が向きがちですが、過去に自分が投資した時間が今の自分を、今投資した時間が未来の自分を作るといった、時間の捉え方にハッとさせられます。
「人の思想や価値観はそれぞれが経験した痛みから生まれるもの。痛みが気づきや祈りとなり やがて生きる意味へと変わってゆく」
引用元:「ブス界へようこそ」第49話より引用
加英子のおかげで殻を破ったレベル2の玄子が、レベル3への進級戦で自身の精神の柱(心のようなモノ)に入った際に、精神の1人から言われた一言。まさか痛みが生きる意味になるなんて驚きの発想です。
こんな人におすすめ
- アクションやファンタジーが好き
- 名言や哲学的なものが好き
- ちょっとクセのあるキャラクターに惹かれる
アクションやファンタジーが好きな方にはもちろん、心に刺さる名言や哲学的なものが好きな方にも是非おすすめしたい作品となっています。最初のレベル1の加英子の姿にはちょっと驚いたり、苦手意識を抱くかもしれませんが、読めば読むほど面白くなっていくので「ブス界へようこそ」の世界観に浸ってみてください。
関連作の紹介
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こちらも「ブス界へようこそ」と同じく河野大樹による読み切り作品。サクッと読めちゃうのでスキマ時間におすすめです。
※こちらの作品は暴力的なシーンが含まれるのでご注意ください。
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※本ページの情報は2025年6月時点のものです。最新の配信状況は公式サイトをご確認ください。