「秋」と聞いて、日本人なら紅葉や秋祭り、食欲の秋や読書の秋を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、世界には秋という季節そのものが存在しない国もあります。この記事では”秋がある国”と”秋がない国”を文化や季節の違いから比較し、さらに実際に海外の人に聞いた声も交えながら、世界の季節の多様性を探っていきます。
日本の四季は特別?

日本では「春・夏・秋・冬」の四季があり、それが当たり前になっています。春は桜を見ながらお花見を楽しんだり、秋は紅葉を見て季節の移ろいを感じたりと、季節の変化を楽しむ文化も深く根付いています。
欧米(アメリカ、ドイツ、フランスなど)も四季がはっきりしており、秋は紅葉や収穫祭、ハロウィンなど文化的にも重要な時期です。オーストラリアなどの南半球でも秋が存在しますが、南半球のため四季が日本とは真逆で3〜5月が秋とされています。
ただ、秋に対するイメージは日本とは異なるようです。スイスの人に聞いてみると、「秋は雨がよく降って曇りが多いから、あまり好きじゃない。むしろ日本の秋が好き。天気が良くて紅葉が綺麗だから。」と話していました。同じ秋でも、その魅力は国によってかなり差があることがわかります。
なお、世界の多くの国では、日本のように明確な四季を感じられる地域は少数派です。
秋がない国の特徴
雨季と乾季しかない国

日本では春夏秋冬が当たり前ですが、熱帯地域の国々では1年を通して雨季と乾季という2つの季節しかありません。そのため、日本人にとって身近な”秋”という感覚は存在しないのです。
雨季はスコールのような大雨が続き、乾季はカラッと晴れる時期が長く続きます。例えば、雨季には新鮮な果物が豊富に出回り、乾季には天日干しされた魚や保存食が作られるなど、食文化も季節に強く影響されています。
熱帯地域の主な国は、以下の通り。
- フィリピン:主に雨季(5〜10月)と乾季(11〜4月)の2つ。気温変化も小さく、常夏の島のため1年を通して高温多湿。
- インドネシア:雨季(11〜4月)と乾季(5〜10月)のみ。赤道直下に位置するため年間を通して暑いが、乾季は特に日差しが強く注意が必要。
- オーストラリア北部:熱帯地域では「wet/dry」と呼ばれる雨季(12〜4月)と乾季(5〜11月)の区分が中心。雨季は高温多湿で、天気が目まぐるしく変わる。乾季は日照時間が長く、比較的過ごしやすい。
実際にインドネシアの人に聞いてみると、「雨季と乾季しかないから秋がわからない。アニメで観るものっていうイメージ。」という声もありました。日本の文化やメディアを通じて秋を知っている、というのも興味深い点です。
夏と冬しかない国

オーストラリアの一部地域では、夏と冬しかないと感じる人もいます。実際には春や秋も存在するものの、日本ほど気温差や自然の変化が大きくないため、二季制として認識されがちです。
現地の人に尋ねると、「夏と冬だけだけど、夏は結構涼しいよ!」とのこと。確かにシドニーやメルボルンなどは夏でも30度未満だったりと、日本に比べて平均気温が上がらず、過ごしやすい気候に恵まれています。
とはいえ、オーストラリアは日本の21倍ほどの広大な国土を有する世界で6番目に大きい国なので、雨季と乾季しかない北部のように地域によって気候が全く異なります。
季節が6つある国
実は、世界の中には日本の四季や熱帯の二季制とは異なり、6つの季節を持つ国もあります。代表的なのがバングラデシュです。
バングラデシュでは、ベンガル暦に基づき1年が6つの季節に分けられています。これは農業や宗教行事に深く結びついており、人々の生活に根付いた独自の季節感を生み出しています。
- 夏(Grishmo/4〜6月):猛暑の時期で、マンゴーやジャックフルーツが実る季節。
- 雨季(Borsha/6〜8月):モンスーンの影響で雨が多く、洪水も発生しやすい。
- 秋(Shorot/8〜10月):空が澄み渡り、穏やかな天気が続く。祭りの季節でもある。
- 遅秋(Hemonto/10〜12月):稲の収穫期にあたり、農村部では最も忙しい季節。
- 冬(Sheet/12〜2月):朝霧が多く冷え込みもあるが、日本の冬ほど厳しくはない。
- 春(Boshonto/2〜4月):花が咲き誇り、色鮮やかな春祭りが開かれる。
日本は四季の国なので、1年は4つの季節というイメージが強いですが、バングラデシュのように農業と文化のリズムに合わせて季節を細分化している国もあるというのは面白いポイントです。
また、インドにも伝統的に6つの季節があるとされ、古代の詩や宗教行事では春(Vasant)、夏(Grishma)、雨季(Varsha)、秋(Sharad)、前冬(Hemant)、冬(Shishir)が存在しています。現代では”雨季と乾季”という分け方の方が一般的になっているものの、文学や祭りの中では今もこの細やかな季節の感覚が息づいています。
季節と文化の結びつき

季節はただの気候ではなく、人々の暮らしや文化、行事、食べ物に深く結びついています。
日本では、秋といえば「紅葉狩り」「お月見」「新米や旬の食材」「読書の秋・スポーツの秋」などの文化が自然と浮かび上がります。季節の文化を生活の一部として楽しむ習慣は、日本文化の大きな特徴と言えるでしょう。
一方で、雨季と乾季しかない国では、行事や食べ物も「雨の時期にできること」「乾いた時期にできること」という分け方になります。例えば、インドネシアでは雨季には大雨で交通が混乱し、乾季には祭りや屋外のイベントが増えるなど、生活リズムそのものが季節の区分によって決まっています。
また、6つの季節を持つインドの伝統文化では、各季節ごとに神話や詩、宗教行事があり、暦や文学との結びつきが強いです。現代の都市生活ではその感覚が薄れてきていますが、地方や伝統行事の場面では今も根付いています。
つまり、同じ季節という概念でも、国や地域が変わると感じ方や文化的な結びつきも大きく異なるのです。日本の”秋”という文化は、四季を重んじる国ならではの独特な価値観の表れとも言えるでしょう。
まとめ
秋がある国とない国を比べると、単なる”気候の違い”以上に、文化や価値観の違い が浮かび上がります。
日本のように秋を楽しむ文化を持つ国もあれば、熱帯地域のように季節が2つしかなく、年間を通して安定した気候の中で暮らす国もある。秋がある国とない国を比較すると、気候だけでなく文化や暮らしの価値観まで大きく変わることがわかります。
日本では当たり前になっている秋文化は、世界の中でも特別な存在なのです。
※本ページの内容は2025年9月時点の調査や聞き取りに基づいています。気候や祭りの時期などは変動する場合があるため、最新情報は現地の観光局や公式発表をご確認ください。